戦前の昭和3年〜4年にかけて発売された、岩波書店の「漱石全集」全20巻です。 この本は実家で眠っていたものですが、戦前アメリカに渡っていた親戚が、現地で購入し、その後戦争前に日本に帰るときに一緒に持ち帰ったと聞いていました。 つまり、戦前太平洋を往復した珍しい本ということです。 その証拠は、本の下部に押されているスタンプです(写真参考)。なんと、made in Japanと押されているのです。また、この全集は当時ロスアンゼルスにあった「博文堂書店」で購入されたようです。この書店の販売用広告ビラが第10巻に挟まれていました。これは多分、日本に一枚しかない戦前のアメリカにあった日本書店の貴重な証拠物ではないでしょうか。(この広告ビラだけでも、探求者には価値があるかもしれません) その他、昭和3年頃の岩波書店の販売広告ビラがいくつか挟まれており(写真参照)、大変興味深いものとなっています。珍品、稀覯本といってもいいと思います。 全般的に90年前の本につき古く、箱に破損箇所(破れたり、一部欠損したところ)も見られます。実家で長期に保管していたので、少々カビ臭い匂いもします。 月報は調べたところ、1,2,7,9,10,11,13,14,16,17巻の計10冊分残っていました。また、当時の岩波書店の宣伝用ビラ、カタログもいくつか見つかりました。また、戦前の地元の街に開店した百貨店の宣伝ビラも一枚挟まれていました(写真参照、第10巻)。 昭和初期に輸出された本を米国で購入し、それをまた大事に日本に持ち帰ったという、なんとも曰くのある全集でした。 今回初めて、全巻開いて確認したところ、生前父が言っていたことが本当なのだとわかり、感慨深いものがあります。 特にロスの書店のビラや岩波書店のカタログ・ビラなどに興味をお持ちの方はいかがでしょうか。 made in Japan のスタンプは、はっきりと印影が分かるのが7個、少し薄いが判別できるものが2個、相当薄いものが8個、経年劣化でほとんど見えないものが3個となっています。 大変古いもので、一部ですが線引き等ありますので、ご了解の上ご検討をお願いいたします。