● Lucio Battisti / Umanamente Uomo: Il Sogno.(72‘) イタリア ◉盤:M - / ジャケット:EX+ ※ルーチオの代表作はこの5作目から始まって8作目まで、ドンピシャの72〜74年に制作された4枚と言っていいのではないでしょうか。 (世界中で量産された歌物作品は打ち上げ花火(ビートルズ)を合図に崩す事を許され自由を得て切磋琢磨、精神性化学反応の奇跡と相まって旬を迎え、完成形として追熟しました。がしかし、以後、機材などの進化していく速度と反比例して衰退を辿っていきます) アシッド感を伴い響いてくるくぐもった声、静と動のせめぎ合った飽くまでも自然な形のアレンジ、過度にプログレッシブになるのを避けたカンタトゥーレを軸とし、歌物から逸脱せずに必要なだけの極上のドラマチックが一筆書きのようなトータルコンセプト作品として構築されています。 歌詞の意味合いを深めながら聴く方には日本盤も当時出ていたのでそちらを、しかしかなりの値段が付いています。 【蛇足ながら】 「歌詞が分かると楽しみが半減する」 という方もおられると思いますが、そういう方は映画よりもその原作となった小説の方が好き、という嗜好の持ち主なのでしょう。 【表現し過ぎることにも良し悪しあり】 表現は半分とは言いませんがある程度隠れている部分、表現として足りない部分の多い方が味わいが深く余韻も長くなります。 しかしそこには「表現されていない部分をどれだけ膨らませることができるか」という人間力、抽斗に仕舞われている海千山千と言わしめるほどの豊富な経験値が試される所でもあります。 破戒僧や元ヤンの教師、健常者として生まれたが障害を持つに至った方、老後に隠遁生活を送る政治家など “陰と陽を見てきた方達” には、その「隠れている部分」が生々しく感じ取れる筈です。 しかし不思議なもので、陰と陽を知り尽くした様な方は生き様そのものが芸術的だからなのでしょうか、芸術系を嗜む方が少ない様に思います。 この事からわかるのは 【実際行動を起こすことの出来ない庶民が疑似体験を求めて芸術を嗜む】 ということ。 ドラマチックとはいかない平坦な道を行く凡人が『山あり谷あり』を求めて“生かしてもらう”。 『欲求は無いものを求める』が真理としてあります。